!テスト そけいヘルニア外来
2020年05月19日
当院では、傷口が小さく、より目立たない手術方法も取り入れております
目次
そけいヘルニアとは
「そけい部」とは足の付け根の部分のことを指します。「そけいヘルニア」とは、本来お腹の中にある腸の一部や脂肪が、そけい部の腹壁(ふくへき)が弱くなって皮膚の下に出てくる病気です。「脱腸」とも呼ばれています。
そけいヘルニアの症状
立った時やお腹に力を入れた時に、そけい部が膨らみます。最初は痛みもなく、柔らかく、押さえたり横になると膨らみはお腹の中に戻り、引っ込んでいきます。
症状が進行すると、膨らみがだんだん大きくなり、ときに痛みや突っ張り感、違和感を感じるようになります。
嵌頓(かんとん)について
そけいヘルニアは膨らみが柔らかくお腹の中に戻るうちは命に関わることはありませんが、嵌頓を起こすと、緊急で手術が必要になります。嵌頓とは、脱出した腸や脂肪がお腹の中に戻らなくなってしまう状態をいいます。嵌頓を起こすと、そけい部の膨らみが硬くなり、激痛を伴うようになります。そのまま放置すると、腸閉塞を起こして吐いてしまったり、はまり込んだ腸が腐り腹膜炎を起こし、命に関わることもあります。
嵌頓して元に戻らない場合は、数時間以内に手術を受けることが必要です。また、腸がはまり込んでも早い段階であれば、用手的に還納(膨らみをお腹の中に戻すこと)できることがあります。
痛みを伴い、膨らみが戻らない場合には早急に病院を受診してください。
そけいヘルニアの治療
そけいヘルニアは、子供の場合は、生まれつき、そけい部から腹膜が袋状に飛び出して残っていることが原因となります。大人の場合は、そけい部に腹圧がかかることで、そけい部の弱い部分が広がってしまうことが原因となります。
大人のそけいヘルニアは基本的に手術をしなければ治りません。ヘルニアバンドなどで飛び出した部分を押さえることで、痛みや腹部膨満などの症状を和らげることはできるかもしれませんが、根本的な治療法にはなりません。
手術方法には大きく分けて①そけい部切開法、②腹腔鏡手術、があります。
そけい部切開法
そけい部切開法はそけい部を切開して補強する手術方法です。膨らんだところを切開し、ヘルニアの穴(ヘルニア門)を見つけて、弱くなっている部分にメッシュを挿入します。メッシュは感染や痛みなどの合併症を起こさない限りは留置したままとなります。
皮膚切開は4-6cm程度ですが、ヘルニアの大きさ、手術の術式、患者さんの体型によって、切開部位や切開の長さが異なります。当院ではメッシュプラグ法、ダイレクトクーゲル法をヘルニア門の大きさやタイプに準じて行っています。
※小児では大人のそけいヘルニアと違い、生まれつき腹膜がそけい部から突出して袋状に残ってしまっていることが原因で発症します。周りの組織は弱くなっていないため、人工物(メッシュ)を使用せずに、突出した部分をしばる手術を行います。
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術では、そけい部は切開せず、腹腔鏡(細い手術用のカメラ)で腹腔内を観察しながら、細い鉗子で手術する方法です。当院ではTAPP(タップ)法を行っています。飛び出している腹膜を、ヘルニア門の部分でくりぬいて、さらに、その周りの腹膜を剥がしてしまいます。この剥がした部分に大きなメッシュを置き、数カ所固定します。最後に剥がした腹膜を縫い合わせてメッシュが腹腔内に飛び出さないようにします。
基本的に、お腹に手術の器械を入れる小さな穴を3カ所あけて手術を行います。それぞれの創は、5mmから10mmの大きさです。
腹腔鏡手術のメリットとしては創が小さく、整容性に優れている点があげられます。また腹腔内からヘルニア部分を観察し、どこが飛び出ているのか、確実に診断することができます。症状がなくても、腹腔鏡で観察すると反対側にもそけいヘルニアを認めることがあります。両側の場合に同じ創で手術ができることもメリットと考えられます。ただし、腹腔鏡手術では必ず全身麻酔が必要なため、全身麻酔のリスクが高い方では施行できません。また前立腺癌などの手術後で、高度癒着が予想される場合にも困難なことがあります。
傷口がより小さく目立たない、単孔手術も実施しております
当院では、より整容性の優れた手術として単孔手術も導入しています。単孔手術ではお臍に約2.5cmの切開と、左側腹部に2mm程度の小さな切開で手術を行います。お臍の創はやや大きくなりますが、お臍の創は治癒すれば目立たなくなります。
そけいヘルニアのタイプによっては単孔手術が困難な場合がありますが、希望があれば担当医にご相談ください。
入院期間・費用
入院期間について
入院期間はいずれの手術方法でも約4-5日間です。お仕事の都合などで入院期間が長くとれない方は、手術後の経過が良好であれば早期退院も検討するので、担当医にご相談ください。
手術後は1カ月程度、重いものを持ったり、激しい運動は避けるようにしてください。痛みの程度は個人差がありますが、手術後1週間程度で、日常生活は支障なく送れるようになります。
腹腔鏡手術の場合
全身麻酔が必要なため手術前日に入院していただき、手術当日は安静が必要となります。
手術翌日から食事を再開していきます。
〇手術と入院のながれ
1日目
手術のご説明と準備を行います。
夕食後に下剤を内服し、絶食を開始します。(お水は飲めます)
2日目
手術の2時間前からお水が飲めなくなります。この日はお食事をとることはできません。
(術後にうがいは可能です)
手術を行います。
手術後~翌朝医師の回診まではベッド上で安静にします。
3日目
術後、はじめて歩行する際は看護師が付き添います。
朝食からお食事を開始します。
5日目
朝食後の回診のあとに退院です。
そけい部切開法の場合
そけいヘルニアの大きさや並存疾患によって麻酔方法は異なりますが、一般的には脊椎麻酔(いわゆる下半身麻酔)で手術を行っています。手術当日の午前中に入院していただき、午後、手術を行います。手術後は5時間の安静が必要ですが、麻酔がきれれば当日から動けるようになり、夕食から食事も可能です。
〇手術と入院のながれ
1日目
手術を行います。
手術後、5時間はベッドで安静にしますが、お部屋に戻られたら水分の摂取も可能です。
夕食からお食事をご用意いたします。
2~3日目
シャワー浴ができるようになります。
行動等に制限はありません。
4日目
朝食後の回診のあとに退院です。
手術費用の概算
そけい部切開法の場合 | 約7万5千円 |
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腹腔鏡手術の場合 | 約16万円 |
※入院費と手術費を合算した費用の概算です。(3割の保険負担の料金で、高額医療費制度利用前の金額になります。)
※お食事、個室の費用は含まれてません。
受診方法
木曜日:午後1時から午後2時まで
担当医師:野々垣 郁絵(日本ヘルニア学会 鼠径部ヘルニア修得医)
担当医師からのメッセージ
そけいヘルニア(鼠経ヘルニア)外来では、専門的な安心した治療をご提供できる環境を整えております。そけいヘルニアは、決して珍しい病気ではありません。ですが、「脱腸って何?」「手術って痛いの?」など、分からないことが多く、不安を感じている方も多いと思います。そうした不安や疑問にしっかり耳を傾け、患者さんが安心して治療にのぞめるようサポートしていきます。そけい部の腫れが気になった方、そけいヘルニアかもしれないと心配な方は、手術が必要かどうかも含めて、まずは一度、お気軽にご相談ください。
また、木曜午後に限らず、これまで通り平日の午前中の外来でも、そけいヘルニア診療を行っています。当院では選定療養費がかかりますが、直接ご来院いただいても診察は可能です。受診に際してご不明な点があれば、お電話にてご連絡ください。