人工関節置換術のスケジュール

目次

術前

 手術日程が決まると、その前30日以内に術前検査を行います。検査の内容は、X線撮影、CT撮像、採血、検尿、心電図検査、呼吸機能検査(全身麻酔の場合)、術前口腔ケア(歯科口腔外科で受けます)です。異常が見つかれば、手術の日程が変更になったり、重症ならば不可能になることもあり得ます。
 人工股関節初回置換術では手術が迅速で出血量が少ないため、同種血輸血の必要はめったにありません。しかし、安全を期して自己血輸血という、ご自身の血液を術前にあらかじめ蓄えておいて、術中~術後に輸血する方法を多く行っています。
 入院は手術前日の午後2時になります。付き添いの方に特に病院にいていただきたいのは手術の1時間ほど前から術後ご説明するまでです。

手術~退院まで

 初回の人工股関節置換術は原則として最小侵襲手技(MIS)、AIを用いた術前3Dシミュレーション、前方進入法(DAA;Direct Anterior Approach), 術中ナビゲーションシステムにより行っています。手術の翌日には全荷重で歩いてトイレや食事その他に移動できるようにリハビリテーションが始まります。頑張ってリハビリテーションに取り組んだ多くの方が、手術の翌日から予定通り、トイレ等に歩いて行けるようになっています。また、股関節の可動域訓練も行いますが、前方進入法では従来よりも脱臼しにくいため制約がかなり少なくなりました。後方進入法の場合には従来通り、禁忌肢位指導を行います。手術では内部は強固に縫合しますが、表皮は縫合せず、治癒を促す特殊なフィルムで被覆し更に防水フィルムで保護しますので、3~4日後に術創部を確認する以外に創部に触れることは通常なく、消毒処置や抜糸抜鉤の痛みを少なくしています。また大きな問題がなければ早々にシャワーが使えるようになります。1週間程度経つと段差を昇降するリハビリテーションも行います。退院前にはジャンプや術側の片脚スクワットを主治医が確認し、これができれば車の運転練習をすぐ行えることもあります。上記のフィルムを剥がしてみて創部が治癒していること、自宅での生活に適応できる程度にリハビリテーションが進んでいることが揃えば退院可能です。

退院以後

 標準では、手術の9日程度後に退院予定となります。退院後はなるべく普通の生活をお勧めすることが多く、リハビリテーションの必要はほとんどありませんが、近所の診療所からのご紹介で来院された方は、今後の受診も多々考えられますので、必ず元の診療所へお手紙をお持ちいただいています。当院での人工関節置換術後にテニスやスキーや山登りなどのスポーツを楽しまれる方も何人もいらっしゃいますが、脱臼や破損、磨耗といった合併症に注意が必要ですので、必ず事前に主治医へご相談ください。脱臼が生じると途端に激痛が生じて踏ん張れなくなり、救急車で整形外科医師のもとへ搬送されることになりますので、くどいようですが決して禁忌肢位をとってはなりません。問題がなければ当センターへの通院は年に1~2回程度のX線撮影のみで済むことがほとんどで、むしろそれ以外は手術のことを忘れているようになれれば理想です。

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