「緩和ケアセンター」緩和ケア通信 No.9 《慢性便秘症と緩和ケア》

2023年09月25日 お知らせ

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8月の勉強会は「慢性便秘症と緩和ケア」というテーマでお話させていただきました。まずは便秘症について、次に便秘症の治療法、最後に緩和ケアにおける便秘についてお話させていただきました。

慢性便秘症について

便秘症についてのガイドラインはいままでは2017年に発行された「慢性便秘症診療ガイドライン」に従って診療を行っておりました。発行後にも便秘の新薬が登場し、新たなエビデンスをもとに2023年7月に「便通異常症診療ガイドライン2023慢性便秘症」が発行されました。医学的における定義は、「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な努責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」とされております。慢性便秘症はQOLを低下させたり、心血管疾患の発症・死亡リスクの増加などに関与します。また聴講者の方からも教えていただいたのですが、認知症の発症リスクにも関与しており、便秘のコントロールがいかに重要であるかが伺えます。

慢性便秘症の治療

治療には大きく薬物療法と非薬物療法に分けられます。生活習慣の改善で効果が得られない場合は薬物治療を検討しますが、まずは浸透圧性下剤を使用します。効果が乏しい場合にはここ5-6年で発売された、胆汁酸トランスポーター阻害薬などの新薬を考慮したり、消化管運動機能改善薬、漢方なども併用したりと、今回のガイドラインでは新薬も含めた治療のフローが詳細に記載してありました。

緩和ケア領域における便秘

緩和ケア領域における便秘の分類としては、
 1.癌の直接の影響
 2.癌の2次的な影響
 3.薬剤性
 4.癌以外の併存疾患 が挙げられます。
 癌患者さんでは疼痛コントロールとしてオピオイドを使用するケースもあり、オピオイド誘発性便秘の約半数が便秘は発症するデータもでています。オピオイド誘発性便秘症は、オピオイドが腸管に存在するμ受容体に結合することで、消化液の減少、蠕動運動の減少、腸管内容物の輸送遅滞、肛門括約筋の緊張によって便秘を引き起こします。先のガイドラインでもオピオイド誘発性便秘症の記載はあり、スインプロイクを始めとした投薬にてコントロールを図ります。全身状態によっては内服困難な患者さんもみえるため、状態に合わせて腹部マッサージ、温罨法、ツボ刺激、姿勢の工夫なども重要です。また排便自体にストレスがかかる動作となる場合もあり、プライバシーや導線の確保、衛生面への配慮など多職種にわたる情報共有も必要となってきます。

  

最後になりますが、今回の発表をさせていただきました川端緩和ケア センター長ならびにスタッフの方々に感謝申し上げます。またご聴講にきていただいた方も8月の暑い中ご参加くださりありがとうございました。
 今後ともよろしくお願い申し上げます。

(消化器内科部長 小林健一)

  

今年度は通信発行の前月に実施した勉強会の内容を通信としてお知らせしてきます。興味を持たれましたら是非勉強会にもお越しください。

公立学校共済組合東海中央中央病院
緩和ケアセンター
2023年9月

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