「緩和ケアセンター」緩和ケア通信 No.10 《終末期における 呼吸リハビリテーション》
2023年11月24日 お知らせ
10月の勉強会は「終末期における呼吸リハビリテーション」というテーマでお話をしました。
呼吸リハビリテーションとは、「呼吸器に関連した病気を持つ患者さんが、可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため、医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して、自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である。」と新しく定義されております。定義には、「予防」、「自己管理」、「健康増進」、「行動変容」が加えられ、双方向性の医療の概念も重要とされております。
終末期における呼吸リハビリテーションでは、トータルペインや呼吸困難、咳嗽の軽減に加えて、廃用、関節拘縮や褥瘡等の予防を目的に実施されます。
主な手技としては、運動療法(全身持久力・筋力トレーニング)、コンディショニング、ADLトレーニングにより構成されます。
運動療法は、呼吸リハビリテーションの中核となり、終末期においても病態に合わせて継続しやすい負荷量(低負荷)を選択します。
コンディショニングは、終末期において特に推奨されるアプローチであり、呼吸や身体の状態を整え運動療法を効率的に行うこと、患者さんの意欲向上や運動に対する不安感軽減などの精神・心理的な介入としての役割もあります。またコンディショニングは、呼吸練習(口すぼめ呼吸、呼吸同調歩行、腹式呼吸等)、リラクセーション、安楽な体位、胸郭可動域練習、排痰法、送風療法等があり、吸入薬等への服薬アドヒアランスの向上等も含まれます。
ADLトレーニングでは、日常生活における呼吸困難の軽減と、動作遂行能力・QOL向上を目指します。主に、筋力強化や 柔軟性等運動機能に対するアプローチと、呼吸困難を軽減するための動作パターンと呼吸のトレーニングや道具の工夫を含めた環境整備等の生活機能に即したアプローチの二本柱で構成されます。
呼吸リハビリテーションは、生涯にわたり継続して介入され、適応となる全ての患者さんに導入されることが望まれます。呼吸困難の軽減、身体活動や健康状態及びQOLの向上・維持を主な目標として、急性期・回復期・維持期(生活期)・周術期を含むシームレスな介入です。アドバンス・ケア・プランニングに従って終末期まで継続され、症状緩和の重要な柱となります。患者さんが疾患や治療などにより様々な影響がある中で、自分らしい生活・人生を考え歩もうとすることを他職種やご家族と連携し支援できる体制が重要となります。
(リハビリテーション科 主任理学療法士
福田 啓太)
今年度は通信発行の前月に実施した勉強会の内容を通信としてお知らせしてきます。興味を持たれましたら是非勉強会にもお越しください。
公立学校共済組合東海中央中央病院
緩和ケアセンター
2023年11月