公立学校共済組合東海中央病院
健診データから
副甲状腺機能亢進症を
早期発見
アルブミン補正カルシウム(James法)とCa-P差によるスクリーニングの有効性
奥村 中¹ · 板東達也² · 芦田涼成¹'⁴ · 久野光皓¹ ·
田牧直樹¹ · 水口敏宏³ · 内田一生³ · 有馬 寛⁴
¹東海中央病院 内分泌・糖尿病内科 ²薬剤部 ³健診センター
⁴名古屋大学大学院 糖尿病・内分泌内科学
📰 BMC Endocrine Disorders — 掲載予定
当院を受診される患者さんへのお知らせ
2026年4月
1
血液中のカルシウム濃度をより正確に判定するために、2021年よりアルブミン補正カルシウム値(James法)を診療に適用しています。この方法は当院の研究によって有効性が確認され、国際学術誌に掲載が決定しています。
2
この取り組みにより、原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を高い精度で発見できるようになりました。早期治療で骨粗鬆症・尿路結石・心血管疾患などの深刻な合併症を予防できる疾患です。
3
補正カルシウム値に異常が認められた場合は、担当医よりご連絡させていただくことがあります。精査には採血・エコー・CT・骨密度測定などが必要となります。ご不明な点はお気軽にお尋ねください。
4
2026年4月現在、当院のPHPT診断件数は年間2.5例 → 12.5例へ約5倍に増加。手術適用症例も多く発見され、早期介入による合併症予防が実現しています。
Clinical Background
背景:なぜPHPT早期発見が重要か
Primary Hyperparathyroidism (PHPT) の臨床的課題
PHPTとは
- 副甲状腺腺腫・過形成による
PTH過剰分泌
- アジア人有病率 約0.18%(推定)
- 多くは無症状で
発見が遅れやすい
スクリーニングの課題
- イオン化Ca・PTH測定はコスト・手技上の問題で健診に不向き
- 日本では基本代謝パネル(BMP)が標準化されていない
- 総カルシウム(tCa)単独では見落としが多い
- 最適なアルブミン補正式が未検証
放置した場合のリスク
- 骨粗鬆症・骨折
- 腎結石・腎機能障害
- 心血管疾患リスク増加
- 認知機能低下
- 透析への進展
→ 本研究の目的:日本の健診で使える最適スクリーニング指標の確立
研究デザイン:3段階の解析
Single-center study at Tokai Central Hospital
STEP 1
補正式の評価
Formula evaluation
血液ガスと末梢血の同時測定データ
5,550検体を後ろ向き解析
(2017〜2024年)
iCaと各補正式(Payne・KDOQI-2・James)の一致率を重み付きCohen's κで比較
▶
STEP 2
カットオフ値の設定
Defining PHPT cutoffs
PHPT患者 64名
対照群 87名
(2013〜2023年)
ROC曲線解析による各指標の最適カットオフ値の導出
▶
STEP 3
健診コホートへの適用
Health screening cohort
健診受診者
2,562名
(2017〜2020年)
実際のスクリーニング性能・PPV・有病率を検証
Step 1:アルブミン補正式の評価
iCaとの一致率比較(n = 5,550)
| 指標 |
総一致率 |
重み付き κ |
高カルシウム域 |
評価 |
| 総カルシウム(補正なし) |
59.9% | 0.572 |
低精度 |
低精度 |
| Payne補正Ca |
49.7% | 0.415 |
低精度 |
低精度 |
| KDOQI-2補正Ca |
57.2% | 0.513 |
中程度 |
中程度 |
| ★ James補正Ca |
64.1% | 0.604 |
最高精度 |
最高精度 |
Key Finding:James法のみが重み付きκ ≥ 0.60(十分な一致)を達成。特にPHPTが現れやすい高カルシウム・正常高値域での精度が他式を凌駕。
Step 2:ROC曲線解析 — AUC比較
PHPT群 n=64 vs 対照群 n=87
※ AUC:曲線下面積(1.0が完全診断) Ca-P差 = James補正Ca − 血清リン
0.965
★ Ca-P差(James)AUC
感度 88% / 特異度 94%
0.983
PTH(比較基準)
最高精度(コスト大)
0.906
James補正Ca AUC
補正式中で最高値
Step 3:健診コホートへの適用(n = 2,562)
各スクリーニング指標の要精査候補者数と陽性的中率(PPV)
有病率 0.17%(確診4名) / すべての症例を検出するためのカットオフ補正適用後
臨床的インパクト:当院でのPHPT診断件数の変化
スクリーニング導入前後の実績
導入前
2.5
例 / 年
総カルシウム単独スクリーニングに
依存していた時期
→
導入後
12.5
例 / 年
手術適用症例も多く発見
早期介入による合併症予防へ
追加コストなし・既存健診データのみで達成
── 骨粗鬆症・腎結石・心血管疾患リスク患者の早期発見に貢献
結論
Conclusions
1
James法によるアルブミン補正Caが、3種の補正式中で唯一イオン化Caと「十分な一致(κ ≥ 0.60)」を達成
2
James法ベースのCa-P差はAUC 0.965・感度88%・特異度94%を示し、PTH検査(AUC 0.983)に匹敵
3
健診コホートへの適用で要精査候補者を64名 → 5〜7名(最大93%削減)に絞り込み可能。PPVは6.3% → 66.7%へ向上
4
当院でのPHPT診断件数は年間2.5例 → 12.5例へ急増。手術適用症例も多く発見され、早期介入が実現