COPD(肺の生活習慣病)について
呼吸器科内科部長 小島克之
COPD (Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)とは有毒な粒子やガスの吸入によって生じた肺の炎症反応に基づく進行性の気流制限(気管支の狭窄による呼吸の障害)を呈する疾患です。
この気流制限には種々の程度の可逆性を認め、発症と経過が緩徐であり、労作時の呼吸困難を生じます。
疫学
1960年代以降タバコの販売量や消費量が増加し、これに約20年遅れてCOPDの死亡率が増加しています。
世界保健機構(WHO)の調査では、COPDは世界の死亡原因の第4位にランクされており、今後数十年間に死亡率はさらに増加し、2020年には死亡原因の第3位になると予測されています。
わが国において「国民衛生の動向」によると、COPDは1999年まで10大死因順位に登場しませんでしたが、2000年に「慢性閉塞性肺疾患」として死因の第10位に登場しました。
このことは、諸外国に比べCOPDの有病率が低いということではなく、多くのCOPD患者が未診断の状態にあるという実態を反映しているものと思われます。
1996年の厚生省の統計ではわが国のCOPD患者数は約22万人とされていましたが、2001年の研究結果をもとに計算すると40歳以上の日本人の8.5%、約530万人がCOPDに罹患していものと推定されています。
危険因子
主な外因性危険因子は喫煙ですが、他に職業上の粉塵や化学物質(蒸気、刺激性物質、煙)、受動喫煙、呼吸器感染などがあります。
診断
咳・痰・労作時の呼吸困難などの症状がある場合や、喫煙歴など危険因子を有する中高年者であれば、COPDの可能性があります。
診断に肺活量検査は必須です。気管支拡張薬投与後の検査で1秒率(全肺活量に対する初めの1秒間の肺活量の割合)が70%未満であれば、気流制限(閉塞性換気障害)が存在します。
COPDにおける病期分類は気流制限の程度を表す1秒量(初めの1秒間の肺活量)で行い、重症度を反映しています。
胸部レントゲンによる早期のCOPDの検出は困難で、COPDの早期発見のためには肺活量検査が必要です
COPDの早期発見のために、近年日本呼吸器学会から「肺年齢」という概念が提唱されました。「肺年齢」とは、1秒量から標準の方に比べて自分の呼吸機能がどの程度であるか確認するための目安です。
自身の「肺年齢」を知ることで、肺への健康意識を高め、多いとされている未受診の方に治療を始めていただく事が期待されています。
治療と管理
喫煙は気流制限を引き起こし肺機能低下を促進させるCOPDの主要な危険因子で、禁煙により肺機能の低下速度を遅延させます(図参照)。
禁煙はCOPDの発症リスクを減らし、進行を止める唯一の最も効果的な治療法です。
COPD患者における肺・気道の炎症や、それに伴う気流制限の進展抑制に有効な薬剤は現時点ではありません。しかし、COPDに対する薬物療法は症状を軽減し、増悪を防ぎ、QOL(生活の質)や運動耐用能も向上させます。
薬物療法の中心は気管支拡張薬(抗コリン薬、β2刺激薬、メチルキサンチン)で、作用と副作用のバランスから単剤の容量増加より多剤併用が好まれます。
吸入ステロイド療法は、重症例において増悪回数を減らしQOLの悪化速度を抑制します。
薬物療法などで症状が安定した患者に対し、栄養療法や運動療法を継続することで日常生活の中で症状の改善を目指します(包括的呼吸リハビリテーション)。
また、軽症のうちから、急性増悪の引き金となる呼吸器感染症の予防が大切です。
日頃のうがい・手洗いはもちろんのこと、インフルエンザ感染予防のためのワクチン接種も必要です。インフルエンザワクチンは増悪によるCOPDの死亡率を50%低下させるため、すべてのCOPD患者に接種が望まれます。